新春企画「冬の間のベーシックチェック」 | DEEP IN GOLF ゴルフティーチングプロ 永井延宏

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新春特別企画「ライバルに3打、差をつける!」

第1回 飛ばしのスペシャリストから学ぶ

キャロウェイゴルフの広告でよく目にする様になった世界ドラコンチャンピオン
ジェイミー・サドロウスキーから学ぶ~その壱「プラス・マイナス」

 

 

 

ネットで調べると、ジェイミー・サドロウスキーはカナダ出身の1988年の7月7日生まれ。我らがタケ小山プロと誕生日が同じ(年は違います)ですね!身長180センチ体重75kgと、競合するドラコン選手の中で、最も小さくて軽量ながら世界ロングドライブ選手権を連覇(2008、2009年)。自己ベストの飛距離は2013年に記録した475ヤードとあります。

 

彼のスイングの特徴については、ゴルフチャンネルやESPNで特集された映像をユーチューブでも見ることが出来ますが、いわゆる身体の柔軟性を活かした捻転差(Xファクターという概念がアメリカでは一般的です)や、かなり深くなるリストアングルに注目しての説明が目立ちます。

 

私は、ちょうど一昨年の今頃、オーストラリアでゴルフィングマシーン系のコーチと交流した際に得たモノや、ミヤマエのスイングロボットの研究などを契機に、自分の中で世界の最先端の理論というのがおぼろげながら見えて来ました。そして、その最先端理論の検証をすべく、サドロウスキーのスイング映像を自分なりに解析し、キーワードとなる「インパクトの圧力」「プラス・マイナス」「Uターン」などが出来てきました。

 

その夏には週刊パーゴルフの巻頭企画で「飛ばしのUターン打法」と紹介され、それを見て久しぶりにコンタクトしてきたかつてのコーチング契約選手Kプロに直接指導して、調子を上げてQT突破ということもありました。

 

今回は、そのサドロウスキーのスイング解析から生まれた、いくつかのキーワードを説明したいと思います。

 

その壱「プラス・マイナス」
これは、いわゆる理論ではありません。「動き」の記号です。いたって単純、難しくないので、ぜひ理解して下さい。

 

右打ちゴルファーの場合は、ボールに正対して構え、自分の真左方向にあるターゲットに向かってボールを打つわけですが、ターゲット方向(左)から離れていく動きを「マイナス」、ターゲット方向に戻す動きを「プラス」と記号付けます。ただそれだけです。

 

難しく考える必要はありません。様はテークバックはマイナス、切り返してダウンからインパクトフォローはプラス。ラジオの野球中継で、「ピッチャー、第1球を振りかぶって、投げました!」というのは、「振りかぶって」がマイナス、「投げました!」がプラスです。

 

ゴルフスイングというのはルール上、単純な1度の振りかぶり動作と振り下ろし動作と定義されています。例えば、トップ位置でぐるぐるクラブを回して勢いをつけて打つのは不正動作で、よく木にへばりついたボールをテークバック無しで掻き出す様なストロークも不正動作です。

 

ですので、全てのゴルファーは「振りかぶって、打ちました!」と、マイナス&プラスの動作でボールを打つ訳です。しかしながら、サドロウスキーと多くの悩みを抱えるゴルファーとの間には、大きな違いがあるのです。

 

それは、トップから切り返して「プラス」の動作に違いがあります。サドロウスキーやいわゆるトッププロ、アマチュアの達人たちは、テークバックで「マイナス」の動きをしている腕とクラブをそのままマイナスにキープした状態で、身体の「プラス」動作で切り返し、腕とクラブがマイナスのままインパクト付近まで持っていきます。

 

これに対して、悩める多くのゴルファーは、トップ位置から腕で直接クラブに対して「プラス」の働きかけをして、インパクトに向かおうとします。分かりやすく言えば、「手打ち」というヤツですね。

 

まとめると、

サドロウスキー テークバックで腕とクラブがマイナスのまま、身体のプラス動作でインパクトへ向かう→腕とクラブはマイナスのまま
悩めるゴルファー トップから腕でクラブを振り下ろそうとする→腕とクラブがプラスになってしまう

 

こうして書くと、「なんだ、タメのことね!?」と思われる方が居ると思いますが、タメという言葉を直接語るとそれは「理論」になってしまうのです。ここでいうプラス・マイナスは理論ではなくあくまで「記号」。

 

「永井さんの言いたいことは、右の手首をマイナスにしたまま、トップから重心をプラス方向に踏み込めってことですか?」

 

「それをやるには、左手首をマイナスのまま我慢させて、左肩を思いっきりプラスにしていけばいいんじゃない?」

 

こんなやりとりや、アタマの中の整理をしてい貰えると、単なる「タメ」や「体重移動」「回転」などという言葉が意味するところについての議論が、少し分かりやすくなると思います。

例えばこの写真などは、こういう切り口になります。

 

■写真左
時計の文字盤でいう9時の一までクラブが下りてきているが、両手首のマイナスはキープされている。トップから左方向への重心移動と腰の回転というプラス動作で、腕とクラブがマイナスのままインパクトゾーンへと導かれている様子が分かる。

 

■写真右
右肘や右手首の角度を見ても、まだ右腕はマイナスのままと言える。左肩は既にマイナス方向へと回転の向きが変わり、それに呼応してシャフトのキックバックが起きて、クラブがいよいよプラス化されインパクトを向かえ様としている。

 

つまり、やっとここでクラブがプラスに変わります。先にまとめた様に、悩めるゴルファーの場合は、切り返しにおいて腕で直接クラブを戻す働きかけをしてしまうので、直ぐにクラブがプラス化されてしまいます。最近はあまり使われなくなりましたが、「レイトヒット」という言葉があります。その昔、ミズノの宣伝コピーで使われていました。プロ、上級紙は「レイトヒット」。それを可能にするシャフトなんていう広告だった様に記憶しています。

 

話しは逸れましたが、クラブのプラス化が遅いのが「レイトヒット」であり、「タメの効いた」スイングとなる訳で、それがサドロウスキーのスイングではとても分かりやすいと思いますので、皆さんもぜひ参考にしてみて下さい。

 

「マイナス・プラス」に関しては、アプローチの動きにも非常に効果的で、実際のレッスンでは、まずアプローチから入ります。そして、それをフルスイングに発展させていく様な展開で、ドライバーまで繋げます。意外とラウンドレッスンの時のワンポイント的なアドバイスでも効果があり、感じを掴むと驚くような飛距離アップも望めます。何より、コースではスイングのテンポ・タイミングとリンクする部分なんで、「マイナス・プラス!」と心の中で唱えてみるのもいいかもしれません。